〖 啄木の息 〗

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幸徳秋水の処刑、作品に影 -啄木学会セミナー-


[アジサイ]


「啄木と大逆事件」探る 高知で国際学会セミナー
 幸徳秋水の処刑、作品に影 真相の究明図り記録化

  • 同学会元会長で名誉会員の近藤典彦さんが基調講演した。大逆事件の影響が表れている啄木作品を示し「日本で初めて事件を作品で取り上げた。啄木の幸徳事件の摂取は絶大なものがある」と述べた。立命館大教授の田口道昭さんは、秋水の経済観や啄木の思想について分析。「啄木は大逆事件の記録を後世に残そうとした過程で学んだ無政府主義に共感しつつも、それを実践することについては距離を置いていたように思われる」と指摘した。
  • 高知ペンクラブ会長の高橋正さんは、秋水が連行された湯河原の旅館に同宿していた友人、田岡嶺雲が「僕は渠が此事件と直接の関係が無いものと信じて居た」と書いていることを挙げ「秋水がシロであることを裏付けている」と語った。
  • 近藤さんは「秋水の存在を小さく見積もる傾向」に疑問を呈し「秋水のありのままの姿をつかみ、きちんと評価しなくてはならない」と主張した。
  • シンポジウムに先立ち、高松市英明高等学校教諭田山泰三さんが「啄木と不抱―新出資料を中心に」、明治大学大学院生の劉怡臻(リュウイチェン)さんが「王白淵の三行詩にみられる啄木文学受容について」と題して研究発表した。(学芸部・阿部友衣子)

(2016-06-21 岩手日報