他の書物では得られない新知見
『石川啄木入門』 池田 功 著
評者 望月善次 岩手大学名誉教授
- 「入門書」とは、『広辞苑』では「初学者の手引きとして書かれた解説書」とある。その多くは、大抵「読む人の心」を動かさない。少し砕けた言い方をすれば、「面白くない」のである。
- その点、この「入門書」は違う。著者の長い間の啄木への取り組み、啄木を多くの人に知ってもらいたいという熱い思い、韓国やドイツでの教授・研究体験をも踏まえた国際的視野の広さなどが「入門書」の「しがらみ」を押し流しているからである。
- 「短歌」においては、現代歌謡曲と啄木短歌、CMに使われた啄木短歌、啄木短歌の受容時期と時代背景など、誰でも関心を持ちそうな項を設けていて読者を引き込む。と、思うと「黄金の色彩と光の詩集『あこがれ』」、「三冊の艶本と性的描写」、「文体面に示されてた人間関係」など、著者が開拓した研究的成果も組み込まれていて、他の書物では得られない新知見も知る事が出来るようになっている。
(2014-03-30 しんぶん赤旗)