「ふるさとの訛りなつかし」が支えた『アリバイ横丁』
[ベテラン記者コラム]
- 〈ふるさとの訛(なま)りなつかし停車場の人ごみの中にそを聴きにゆく〉
石川啄木の歌が思い浮かんだ。
- 岩手県出身の啄木は東京での暮らしになじめず、故郷が恋しくなると、上野駅に出かけた。帰りたくても故郷は遠い。せめて到着する列車からはきだされる乗客の、懐かしい東北弁を聞きたいからだった。
- 上野駅のホームに歌碑がある。地方から都会に出てきた者は、誰もがこの歌に共感するだろう。
- 大阪駅前の地下街にある「ふるさと名産」街が3月末で姿を消すという。誰が名付けたか、「アリバイ横丁」の名前の方が通りがいいかもしれない。
- 国内どころか、世界各地のどんなものでも、ネットショッピングや通信販売で手に入る。が、そこには「ふるさとの訛り」は感じられない。便利になって、代わりに何かを失う。昭和世代の繰り言だろうか。
(2014-03-03 産経ニュース)