〖 啄木の息 〗

石川啄木の魅力を追い 息づかいに触れてみたい

〈誰が見ても/われをなつかしくなるごとき/長き手紙を書きたき夕〉石川啄木


[フヨウ]


天声人語 朝日新聞

  • 手紙を書くのに季節は無関係のはずだが、秋は人を、用もないのにその気にさせる。古くから、秋空に飛来する雁(かり)は懐かしい人の消息をもたらす使いとされてきた。
  • 「雁の使い」とは手紙のこと。
  • そういえば石川啄木に、いかにも啄木らしい一首があったのを思い出す。〈誰(たれ)が見ても/われをなつかしくなるごとき/長き手紙を書きたき夕(ゆうべ)〉。やはり季節は秋だろうか。メールの一斉送信では、懐かしさの情も中ぐらいになる。

(2013-09-22 朝日新聞天声人語