2013-09-22 〈誰が見ても/われをなつかしくなるごとき/長き手紙を書きたき夕〉石川啄木 啄木 広場 [フヨウ] 天声人語 朝日新聞 手紙を書くのに季節は無関係のはずだが、秋は人を、用もないのにその気にさせる。古くから、秋空に飛来する雁(かり)は懐かしい人の消息をもたらす使いとされてきた。 「雁の使い」とは手紙のこと。 そういえば石川啄木に、いかにも啄木らしい一首があったのを思い出す。〈誰(たれ)が見ても/われをなつかしくなるごとき/長き手紙を書きたき夕(ゆうべ)〉。やはり季節は秋だろうか。メールの一斉送信では、懐かしさの情も中ぐらいになる。 (2013-09-22 朝日新聞>天声人語)