[ノブドウ]
啄木と釧路
国際啄木学会2013年大会から -下-
国際啄木学会の2013年釧路大会が9月の7、8日の両日開かれた。
◎シンポジウム
テーマ「上京前の、啄木における北海道と釧路」
「(北海道時代について)新しい文学観である自然主義、新しい思想である社会主義に出会い、大いに刺激を受け、東京に行きたいという思いが噴き上げるように湧いてきた」と指摘。
- 北畠立朴さん(釧路啄木学会会長)
「(釧路新聞記者として活躍した啄木は)記事を思い通りに書いた。高級料亭に行き、借金も残したがお金をたくさん使った。26年の人生の中で、釧路の76日間はオアシスだった」。
- 大室精一さん(佐野短期大学教授)
歌集「一握の砂」の「しらしらと氷かがやき/千鳥なく/釧路の海の冬の月かな」を考察。千鳥がいない2月のことを詠んだもので虚構だとする論に対し、「短歌の配列が必ずしも時系列になっていない。啄木は3月の日誌に生まれて初めて千鳥が鳴くのを聞いたと書き、このことを詠んだものと思われる--ことなどから「歌として問題はない」と主張。
- 大会は、釧路を含む北海道での1年足らずの漂泊生活が、啄木の短い生涯の中で陰に陽に大きな礎となったことを、あらためて示した。
(2013-09-13 岩手日報)