〖 啄木の息 〗

石川啄木の魅力を追い 息づかいに触れてみたい

空に吸はれし 十五の心(啄木)と「16歳の汗」


[ハートヘデラ]


16歳の汗

  • もの思いにふける。ただ空を眺める。何を考えるでもなく、またもの思う。遠い青春時代にはこんな日々が何度もあった。
  • そんな空虚なひと時は、凡人の証しと思っていたら、どうもそうではないらしい。「不来方(こずかた)のお城の草に寝ころびて 空に吸はれし 十五の心」(石川啄木、一握の砂)。中学時代の啄木。恋と文学の熱に浮かされ、勉強も手に付かず、教室を抜け出して空を眺めた15歳の思い出の秀歌だ。
  • 誰もが経験する行き先の定まらない青春の多感な思い。ただ、この16歳の少女には今そんな迷いは、微塵もないだろう。高松市出身のピアニスト、松田華音(かのん)さん。4歳でピアノを始めて6歳でモスクワの音楽学校に首席で入学。音楽学校の今年の最優秀生徒に外国人で初めて選ばれた。

(2013-02-21 四国新聞>コラム)