〖 啄木の息 〗

石川啄木の魅力を追い 息づかいに触れてみたい

太宰と啄木が大勢の読者から熱く読まれ続けているのはなぜ


[ツリガネニンジン]


○月刊 THEMIS 2012年8月号
愛と苦悩と貧困を謳った
  太宰治石川啄木が今も愛される秘密

  • 6月19日、東京三鷹市禅林寺太宰治を偲ぶ「桜桃忌」が開かれ、若い女性を含む多くのファンが駆けつけた。
  • 石川啄木も没後100年を迎える今年、各地で催し物が開かれるなど根強い人気を誇っている。7月4日には東京文京シビックホールで講演会『啄木学級』が開かれ、定員1000人の会場が申し込みで一杯になり、入場できないファンも大勢出たため、マスコミ取材すら制限された。
  • 死後長い年月が経ったいまも、この2人が大勢の読者から熱く読まれ続けているのはなぜか。
  • 啄木は26年2か月という短い人生のなかで『一握の砂』『悲しき玩具』などの作品を発表し、教科書の短歌採用数がトップの天才といわれてきた。
  • 明治大学教授で啄木研究者の池田功氏はいう。「啄木は真面目に仕事をする人だった。近年、教育者としての評価も高くなってきているし、北海道の釧路日報では編集長格にもなった。文学一本でやりたかったのに、だ」「啄木は自身が『私も亦悲しき移住者の一人だ』と告白している』東日本大震災で心ならずも故郷だった東北を離れざるを得なかった人々の心に、啄木の望郷の念が強く響いていることは容易に想像できる。
  • 啄木と太宰--2人の苦悩と挫折の青春や貧しさと闘った日々は、現在の閉塞した社会状況のなかで、悩みや不安を抱える若い世代から中高年にまで、強く共鳴しているのではないだろうか。

(月刊 THEMIS 株式会社テーミス発行)