〖 啄木の息 〗

石川啄木の魅力を追い 息づかいに触れてみたい

啄木の『一握の砂』は、「俺が俺が」という歌集


[ゲンノショウコ]


インタビュー
小川洋子さんに聞く−−散歩から小説が生まれる
独特の小説世界を生み出し、多くの読者を魅了し続ける小川洋子さん。小説の執筆、文学賞の選考、本について語るラジオのレギュラー出演……さまざまな仕事をこなす小川さんの日常は?


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  • −−小川さんの小説は、自分が立っている位置を少しずらすだけで、いろいろな世界が見えてくるということを教えてくれる気がします。今の時代、自分にこだわりすぎて不自由を感じているような若い人も、読めば楽になるような気がするんですが……。
  • 小川 この前、ラジオで石川啄木の『一握の砂』を取り上げたんですが、あれも「俺が俺が」という歌集で。若いですよね、自分がいかにかわいそうかということを切々と訴える。でも考えてみれば、彼は二十六で死んでいるので、しょうがないですね。自分だって二十代の頃は自分が一番大事だったし。自分というものにものすごくとらわれる時期……人によって五年なのか十年なのか、そこを通り抜けた後ですよね。そこを抜けたとき、私も小説の書き方が変わったかもしれません。

(2012-07-31 毎日新聞>特集・連載)