〖 啄木の息 〗

石川啄木の魅力を追い 息づかいに触れてみたい

テレビ放送「石川啄木の世界へ」私的レポ


[ニガナ]


<私的レポート>
  NIKKEI × BS LIVE 7PM 石川啄木の世界へ 今こそ短歌を楽しもう!(2012年7月13日)
 26年の短い人生で作った歌は没後100年を迎えても人々の共感を呼び、愛され続けている。
 <ゲスト>
  ◇ 枡野浩一歌人
  ◇ 池田功(明治大学政治経済学部教授・国際啄木学会副会長)
   ○ MC 別所哲也 松本あゆ美 
   ○ 麓幸子(日経ウーマン発行人)


「日本で最も有名な歌人 石川啄木の魅力を語る!」

  • 別所 国際啄木学会について
  • 池田 国際啄木学会は、22年前、啄木を研究するために出来た。国内外で二百数十人の会員がいる。大会やセミナーを毎年行い、韓国・台湾・インド・インドネシアなどでも開催している。14の言語、17カ国語(フランス・ドイツ・フィンランド・中国・韓国・ヒンドゥ−・アラビア・・・)に翻訳されている。
  • 別所 五七五七七の短歌は他の言語で対応できないのでは?
  • 池田 そのまま翻訳できるのは韓国語だけ。それ以外は、啄木が三行で書いているので三行にしているものが多い。ドイツ語では五行、七行と自由詩のように訳している。その国にとって一番リズミカルな形で翻訳しているといえる。
  • 麓 啄木がこんなに世界中に広がっているのを知ってびっくりした。
  • 枡野 『石川くん』を書こうと思ったきっかけは、冗談で啄木の短歌を現代語に訳したら評判になったから。啄木の短歌は今の人が読んでもふつうに面白い。それにエッセイを添えて一冊の本にした。本の中に「啄木が盗作したのではないか」と書いた。それを読んだ国際啄木学会の森さんという方が「それは間違い」と教えてくれた。今度増刷するときは直す予定でいる。啄木は死んでいても、みなさんの目が光っていて啄木を守っている感じがした。

   友がみなわれよりえらく見ゆる日よ
   花を買ひ来て
   妻としたしむ  (啄木)


   友達が俺よりえらく見える日は
   花を買ったり
   妻といちゃいちゃ  (枡野)
啄木は教科書で読むと勤勉なイメージがあるがもっとお茶目な人。

  • 別所 啄木の人間的魅力について
  • 池田 26年2カ月の人生で文学生活はわずかに10年位。その10年を「前」「後」に分ける。「前」は、神童といわれ、天才詩人といわれ、19歳で結婚、20歳で子どもを持つ。早熟で驕り高ぶった、嫌な奴だったと私は思っている。「後」は、それが大きく変わる。23歳のとき、妻が家出した。啄木はその理由を「自分の生活がいい加減だからだ」と、自己批判をした。「生活を立て直した上で文学をやらなければ」と変化した。その段階で啄木には社会の不条理や強権の問題が見えてきた。そこに啄木の魅力を感じている。
  • 枡野 石川くんは自分の結婚披露宴を欠席したような男だった。すごく変わった人。でも、最後まで奥さんに愛された憎めない人だった。『石川くん』には悪口ばっかり書いたが、ものすごく愛すべき人だと思う。
  • 池田 啄木の借金メモによると、合計1372円、現代の680万円位。誰に借りているかというと、お父さんや親戚に450円(全体の三分の一)。今の若者が親に金を借りてメモを書くだろうか。啄木は律儀で真面目だった。金田一京助には約100円。金田一は後年こう書いている。「石川君に渡した金はあげるつもりで、返してもらうつもりは全くなかった」。100年前の人間は才能のある人に援助するという考えが多かった。

   不来方のお城の草に寝ころびて
   空に吸はれし
   十五の心
空に自分の夢と希望を羽ばたかせた歌。啄木は15歳の頃を回想して詠んだ。啄木は、シルバー世代に読んでほしいと書いている。「15の夜」と歌った尾崎豊と啄木は精神構造が似ている。

  • 別所 啄木没後100年で起きているブーム その経済効果は?
  • 麓 全国各地でブームが起きている。100年記念で関連本の出版、啄木文学碑がいろいろなところに建てられている。およそ170基。生誕の地・盛岡と、終焉の地・文京の交流なども行われている。
  • 枡野 啄木は北海道に長くいたわけでもないのに、「啄木は北海道のものだ」というような考えをもたれている。愛されキャラだ。すごい才能を持っているが現代短歌界では軽んじられている。むしろ、小説家のほうに愛されている。
  • 麓 奥さんの節子さんが家出をしたことが啄木の人生を変えてしまったという話を聞いて、私は節子さんに関心をもった。
  • 別所 これだけしっかりした思想を残した啄木。没後100年、皆さんも注目してはいかが?