〖 啄木の息 〗

石川啄木の魅力を追い 息づかいに触れてみたい

「啄木 うたの風景 第 5 回」岩手日報

第一部 青春の輝き(1)
 常光寺、宝徳寺(盛岡市玉山区
  故郷の四季が源泉に
没後100年を経て、今も多くの人々の共感を呼ぶ石川啄木の歌の数々。その源には、ふるさと渋民の自然や多感な少年時代を過ごした盛岡の友など、さまざまな出合いがあった。第一部は、若き日の啄木の姿を追いながら、県内を中心に文学碑を紹介する。

  • 石川啄木は、寺の長男として日戸村(現・盛岡市玉山区日戸)で生まれた。「石川啄木生誕之地」の記念碑は、啄木の父一禎が住職を務めた常光寺の門の横にある。啄木の生誕70年を記念して地元住民が建てた。生涯の友人だった金田一京助の流麗な筆文字が刻まれている。常光寺には、一家が使った八畳間が復元されている。
  • 一家が隣村の渋民(現・盛岡市玉山区渋民)の宝徳寺に移ったのは1887(明治20)年の春。一禎は第十五世住職となり、啄木はまだ1歳だった。

  ふるさとの寺の畔の/ひばの木の/いただきに来て啼きし閑古鳥!
歌碑は、樹齢約350年のヒバ(別名さわら)の近くにある。啄木五十回忌に建てられた。

  • 詩集刊行のため上京する18歳まで、啄木にとっての家はこの寺だった。3姉妹の間で、長男として自由に育てられた啄木。四季折々の自然が奏でる音や鳥の声を聞きながら成長していく。

(学芸部・小山田泰裕)
(2012-05-02 岩手日報