日経おとなのOFF
「美しい日本語と正しい敬語が身に付く本」日経BP社 2012年3月発行 880円
● 時候のあいさつは、タイミング × 個性で勝負
かの文豪たちも、相手の心を和ませる季節感のある手紙を数多く交わしていた。意外にも技巧に走ったものや難解な言い回しはなく、実感のこもったシンプルな言葉が多く使われている。
夏
石川啄木
「手紙を書こう書こうが
遂今日まで宿題になっていると、
君の方からまた先鞭をつけられた。
弱っちゃった。東京は二三日来また雨、
これにも弱っちゃった」
(明治42年7月9日、友人あて)
秋
夏目漱石
「伊香保の紅葉を貰って
面白いから机の上へのせて置いたら
風がさらって行って仕舞った。
どこをたずねてもない」
(明治39年10月19日、門下生あて)