〖 啄木の息 〗

石川啄木の魅力を追い 息づかいに触れてみたい

啄木学級 文京シビックホール<その2 対談> 啄木行事レポート

《関連イベントに参加しての私的レポート》



[クリ]


啄木学級「文の京(ふみのみやこ)講座」


<その2 対談>

「真の美と生命と -文学の力-」

  岸井成格氏と石川啄木記念館山本玲子学芸員


・山本
3.11をきっかけにして、私たちは変わったと思う。3.11前には、ダムをつくったからここまで津波は来ないだろう、何でも人間はできるのだ、と思ってしまっていた。安心し過信したことが多くのひとの命を奪った。啄木は100年前から人間に警告し、「気づきなさい」と呼びかけていた気がする。
岸井さんは 『サルと人と森』の序文で「本当の豊かさや人の幸せは便利な物に囲まれていることではない。幸せは感じるものだ」と書いてくださった。


・岸井
3.11で何が変わったか。地域・家族の絆が大切だから、もう一度その絆を結び直そうというきっかけになった。20世紀のアブノーマルな暮らしにブレーキがかかり、身の丈にあった豊かさ幸せを求めていこうと思い始めた。


・山本
明治29年三陸津波で大被害を受けたとき、「ここから下には家を建てない」という碑が建てられた。その教えを守って、今回の津波から難を逃れた地域がある。歴史から学ばねばならないと思った。啄木が絵本の中で、過去を忘れるものには将来はない、あわれなる人間は早晩滅亡する、と警告している。


・岸井
自然から学ぶ知恵は大変なものだ。
毎日新聞津波の写真が全世界500社に配信された。それは紙の写真だから残る。また、避難所では紙の新聞が人気だった。電子新聞になっていくとどうやって残っていくのか心配だ。


・山本
ひとは自然と調和して生きていかないといけない。
啄木の文学は人の心に寄り添って一緒に泣くということができる。一緒に泣いて気持ちを吐き出させてくれるのが啄木の歌だと思う。


・岸井
真善美のうち、真と美は変わらない。善は立場や時代で変わる。いま、我々が認識で求められる真と美は自然であるということを啄木から教えられた。