《関連イベントに参加しての私的レポート》
[クリの雄花]
啄木学級「文の京(ふみのみやこ)講座」
- 2011年7月1日(金)
- 会場 文京シビックホール(東京都文京区春日)
<その1 講演>
啄木の文学論などに触れることはできないと思うが、啄木の「林中の譚」をもとにした絵本『サルと人と森』を森びとプロジェクト委員会から出版し序文を書いた縁で啄木の話をしたい。
いまの日本は大震災3.11により大きな歴史の転換期を迎え、驚異の年といわれている。イスラムの民主化の嵐は中国・中央アジアなどへ影響を与えるだろう。ギリシャの金融危機は世界恐慌の引き金を引きかねない。
私は「山と心に木を植える"森びとプロジェクト"」の委員をやっている。日本の緑は世界に冠たるものである。ところがいま、木はどんどん枯れてどんな対策をやっても追いつかない。どうやって木を守っていったらよいかの運動のスタートのきっかけをくれたのが啄木の「林中の譚」である。
内容は、サルと人間が文明論を戦わす。人間は、木を倒し道路をつくり、権力で自然破壊をする。サルはその道は天国ではなく地獄に通じる道だ。自然だけは守ってくれと警告する。
日本人は昔から天変地異などに諦めを持ち、最悪のこと想定外のことは考えないようにしてきた。啄木はこの本で「想定外のことにも対処しないといけない」と警告している。
啄木は日清戦争日露戦争が始まったその時代に閉塞感をもち、人間の傲慢さ驕慢さを言いたかったのではないか。
3.11によって日本人が今まで経験したことのないことが起きてくるだろう。意識も感覚もすべて一から変えざるを得ないときがくる。
政治経済が混迷に陥っているときだからこそ、誰もがいま一番やらなければならないことに全力で進んでいけるときである。誰もが坂本龍馬になれる時代だ。
この辛い出来事の後にもう一回何か奇跡が起きるのではないか。その種はなにか。それはいままでの歴史に学ぶしかない。
(つづく 対談「真と美と生命と」)