2011-04-04 「やはらかに柳あをめる…」どうか慈母の優しさで 啄木 広場 [芽吹き] 天声人語 朝日新聞 東北を代表する川といえば日本海に注ぐ最上川と、岩手県を南流して宮城県石巻市で太平洋に出る北上川だろう。 こんな一首がある。〈川幅の太さのままに海となる北上川の長き圧力〉高橋みずほ だが大津波は、その滔々たる「圧力」を押し戻して、川を50キロもさかのぼっていた。 地震翌日の小欄で引いた寺田寅彦は、日本の自然には「慈母の愛」と「厳父の厳しさ」があると述べている。 〈やはらかに柳あをめる/北上の岸辺目に見ゆ/泣けとごとくに〉啄木。被災地にはなお悲嘆と慟哭がやまない。いのち萌える春よ、どうか慈母の優しさでみちのくを包めよ。 (2011-04-04 朝日新聞>天声人語)