〖 啄木の息 〗

石川啄木の魅力を追い 息づかいに触れてみたい

韓国併合100年@東北(下)

  地図の上朝鮮国にくろぐろと墨をぬりつつ秋風を聴く

  • 韓国併合から1カ月ほどたった1910年10月1日発行の短歌雑誌「創作」に、石川啄木の「九月の夜の不平」と題した34首が載った。
  • 岩手県日戸村(現盛岡市)に生まれた啄木。併合前年に東京朝日新聞の校正係に就いた。「韓国併合条約」公布翌日の1910年8月30日付の東京朝日新聞も早々に目にしていた可能性が高い。
  • 2面には日本列島、樺太、台湾に加えて朝鮮半島も塗りつぶされて「日本の領地」を示した地図が載った。3面は朝鮮半島の拡大図。紙面はお祝いムード。だが、啄木の思いは違った。
  • 国際啄木学会の森義真・評議員の解釈は、啄木は3面の地図を墨で塗ったというものだ。「併合され、亡国となった民にとって、喪を示す悲しみの黒で塗りつぶして哀悼を」。そんな心が歌に込められているとみる。

(2010-09-30 朝日新聞>マイタウン>青森)