〖 啄木の息 〗

石川啄木の魅力を追い 息づかいに触れてみたい

「勤め人」をうたった啄木 ---朝日新聞


【シダレウメ】


“うたをよむ”
「勤め人」をうたった啄木  ---三枝昂之(歌人
     朝日新聞 歌壇俳壇


  家にかへる時間となるを、
  ただ一つの待つことにして、
  今日も働けり。
       『悲しき玩具』

  • 石川啄木は校正係として東京朝日新聞社で働いていた。
  • 勤務は十二時出社、六時退社が基本だった。楽な条件と思うが、それでも啄木はよく休んだ。
  • そして出社したあとの唯一の楽しみは退社時間。


  こみ合へる電車の隅に
  ちぢこまる
  ゆふべゆふべの我のいとしさ
       『一握の砂』

  • 歌は通勤帰りの自分をスケッチしている。「ちぢこまる」には日々の仕事をなんとかこなす勤め人の健気さと小さな自愛がある。

(2010-02-01 朝日新聞 歌壇・俳壇)