〖 啄木の息 〗

石川啄木の魅力を追い 息づかいに触れてみたい

「石ころだって役に立つ」--「本」と「物語」に関する記憶の「物語」


エゴノキ

「石ころだって役に立つ」

高度成長期時代に著者が読んだ「本」と「物語」を自分の青春の中に重ねたエッセイ。

やはり、題名となったフェデリコ・フェリーニ監督の「道」が印象深い。
母親から、口減らしのため大道芸人に売られた娘・ジェルソミーナ。自分には取り柄がないと落ち込んでいるときに、綱渡り芸人からこんなことを言われる。「この世の中にあるものはどんなものでも何かの役に立っている。たとえば、この石だって。無用のものなどない。お前だってそうだ」

私もこのシーンは何度も巻き戻して観た。ジェルソミーナ役のジュリエッタ・マシーナの絶望し不安に揺らぐ瞳が、芸人の言葉で輝き始めるのを繰り返し見ていた。
著者はマンガで本格的に啄木を描いてもいる。『「坊っちゃん」の時代』第三部 「かの蒼空に」で啄木の明るく人生を楽しむ姿-部分的にだが-も描いた。マンガで見る啄木はほぼ初めてだったので、そうかそうかと読んだ覚えがある。


読んだ作品も観ていない作品も、その時代を感じて楽しんだ。