〖 啄木の息 〗

石川啄木の魅力を追い 息づかいに触れてみたい

『消えたカラヴァッジョ』るきさん似?

イチョウの芽吹き】


『消えたカラヴァッジョ』

  • ジョナサン・ハー 著 田中靖 訳 岩波書店
  • 2007年 2200円+税

天才画家・カラヴァッジョの作品「キリストの捕縛」は長い間行方不明だったが、1990年、アイルランドの教会で見つかった。
なぜそんなところに……果たして本物か……、謎解きは、そのままミステリー小説だ。しかし、これは歴としたノンフィクション。
美術史を研究する女性は、カラヴァッジョに関係した貴族の地下文庫で古い目録などを調べる。別の面からは、絵画修復士が顔料の分析やX線などを使って見極めていく。


人物描写が鋭くて、貴族や修道士や学者や学生たちが生き生きと目の前に現れる。
名画の本を開き、カラヴァッジョの作品を眺めながら夢中で読んだ。


訳者のあとがきもおもしろい。
「跳ねっかえりの現代イタリア娘、ローマ大学を優等で卒業した将来有望な院生だが、少女漫画ふうにいえば、高野文子描くところのヒロイン像(たとえば、『るきさん』)にちょっぴり不埒な岡崎京子フレイバーを加味したような感じの知的なおてんば娘なのだ。それが老いた侯爵夫人を口説きおとし、カビ臭い地下文庫で財産目録や古帳簿の山から数行たらずの新事実をみつけだす……」


訳者も楽しんで仕事した・・・ネ。