〖 啄木の息 〗

石川啄木の魅力を追い 息づかいに触れてみたい

『石川啄木 その散文と思想』池田功 著


【『石川啄木 その散文と思想』】

「はじめに」より
啄木は短歌、詩にすぐれた作品が多い。しかし、啄木自身は小説家になることに全力を傾けていた。「弓町より──食ふべき詩」のなかで「小説を書きたかったが、遂に書けなかった」と、記している。
しかし、事実はそうではなく、残した小説、日記、書簡、随筆、散文、評論などは、現在も読み応えがあり重要な問題を多く含んでいるのである。

第一章 散文の世界
(一)小説
 一、音の物語「雲は天才である」論
 二、「札幌」に描かれた狂 ― 文明への批評と救済
 三、「赤痢」「鳥影」における赤痢の情報を読む
 四、賞金稼ぎの道 ― 啄木と懸賞小説

(二)ローマ字日記
 一、作品化への方法意識
 二、「ローマ字日記」と江戸時代艶本

(三)書簡
 一、文体・署名・人称について、及び重要書簡
 二、書簡体文学への意識


第二章 思想の世界
 一、社会進化論の影響(一) ― 高山樗牛を通して
 二、社会進化論の影響(二) ― 「相互競争」から「相互扶助」へ
 三、石川啄木と短歌「滅亡」論
 四、思想を育んだ北海道
 五、古典芸能の享受