【『石川啄木 その散文と思想』】
- 池田功 著 世界思想社
- 2008年 5,800円+税
「はじめに」より
啄木は短歌、詩にすぐれた作品が多い。しかし、啄木自身は小説家になることに全力を傾けていた。「弓町より──食ふべき詩」のなかで「小説を書きたかったが、遂に書けなかった」と、記している。
しかし、事実はそうではなく、残した小説、日記、書簡、随筆、散文、評論などは、現在も読み応えがあり重要な問題を多く含んでいるのである。
第一章 散文の世界
(一)小説
一、音の物語「雲は天才である」論
二、「札幌」に描かれた狂 ― 文明への批評と救済
三、「赤痢」「鳥影」における赤痢の情報を読む
四、賞金稼ぎの道 ― 啄木と懸賞小説(二)ローマ字日記
一、作品化への方法意識
二、「ローマ字日記」と江戸時代艶本(三)書簡
一、文体・署名・人称について、及び重要書簡
二、書簡体文学への意識
第二章 思想の世界
一、社会進化論の影響(一) ― 高山樗牛を通して
二、社会進化論の影響(二) ― 「相互競争」から「相互扶助」へ
三、石川啄木と短歌「滅亡」論
四、思想を育んだ北海道
五、古典芸能の享受