〖 啄木の息 〗

石川啄木の魅力を追い 息づかいに触れてみたい

 啄木の評論『時代閉塞の現状』は、とても現代的だ


[ハナゾノツクバネウツギ]


連載「明治の50冊」決定 激動期…先人の知恵に学ぶ [産経ニュース]

  • 来年は明治150年。この区切りの年、文化面で「明治の50冊」の連載を始める。従来の秩序や規範が溶解しつつある時代を生きる私たちにとって、明治維新から自由民権運動、日清・日露戦争大逆事件という激動の時代を生きた明治人の知恵に学ぶことは、国の進路を誤らず、自身の人生を誤らないためにも、とても意味のあることだと考える。                   
  • 少し裏話を。最も大きな問題は50冊をどう選ぶかということだった。選定会議は3回開いた。記者が自分の推薦作品をプレゼンし、質疑応答をかわしながら作品を絞り込んでいった。こうして作成した一次案を、日本近代思想史が専門の先崎彰容日大教授に見ていただき、若干の修正を加えてようやくリストは完成した。
  • 「明治前期は植民地化の危機感を背景に、国家を問題とした作品が多い。日露戦争後、その緊張感が薄れると、関心は個人の内面に向けられるようになり、同時に社会に対する違和感も芽生えてくる。そして明治末期に起きた大逆事件は社会不安を醸成し、国家社会主義に関心が寄せられるようになる。つまり『公→私→公』というサイクルが見て取れます」と先崎さん。
  • 「このサイクルを意識すれば、明治期の作品をぐっと現代に引きつけて読むことができる。それもひとつの読み方です」。たとえば、60年安保闘争が挫折したときには、自由民権運動挫折直後に「楚囚之詩」を書いた北村透谷に関心が寄せられたという。それから半世紀後の現在なら、「石川啄木が面白いと思う」と先崎さんはいう。
  • 「リストには入っていませんが、啄木が大逆事件の直後に書いた評論『時代閉塞(へいそく)の現状』なんか、とても現代的だと思います。『一握の砂』を紹介するときにぜひとも触れてもらいたいものです」
  • 当然、そうなることだろう。連載は1月8日、「西国立志編」から始まる予定だ。(桑原聡)

(2017-12-13 産経ニュース)


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