〖 啄木の息 〗

石川啄木の魅力を追い 息づかいに触れてみたい

平出修は「明星」の同人で石川啄木とも親しかった

(新ポリティカにっぽん)源氏物語から政治を考える
 早野透元朝日新聞コラムニスト・桜美林大学名誉教授

  • 11月の最後の日曜日、東京・日比谷のホールで、「明星研究会」の「与謝野晶子の古典愛」と題する催しがあって、出掛けてみた。この日のテーマは、晶子と晶子が現代語訳した「源氏物語」の関係について、歌人たちが論じあうものだった。
  • 1911年1月、天皇を害そうと企てたという大逆事件というできごとがあって、幸徳秋水や大石誠之助、管野スガら12人の社会主義者が死刑になった。しかしこれは、明治国家が仕組んだ冤罪(えんざい)だった。ちょうどそのころ、出産に臨んでいた与謝野晶子は、こんな歌を詠んだ。

 産屋なる わが枕辺に 白くたつ 大逆囚の 十二の棺

  • この事件の被告人たちの弁護人となったのは、平出修という人物である。新潟県出身、弁護士であり歌人でもある。「明星」の同人であって、石川啄木とも親しかった。その孫にあたるのが平出洸さんで、わたしが朝日新聞で連載していた「ニッポン人脈記――大逆事件残照」という記事を書いたとき、取材を通じて知り合い、こんどの催しを教えていただいた次第である。
  • 源氏物語」はいうまでもなく、時は平安時代紫式部が書いた、光源氏という美男子が数々の女性と繰り広げた恋愛物語である。ところが、わたしが驚いたのは、島内景二さん(電気通信大学教授・歌人)によると、「源氏物語」は、じつはむしろ「政道書」として読まれてきたという側面があるというのである。それはどういうことか、政治の教科書ということなのかどうか、「源氏物語」ってそんな読み方もできるのか。

(2016-12-06 朝日新聞