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◎古書通信 < 八木書店
宮沢賢治 菊の俳句短冊【日本古書通信 編集長だより11】
- 30年近くも前の、昭和63年明治古典会七夕市に、啄木の短冊「東海の小島の磯の白砂にわれ泣きぬれて蟹とたはむる」が出品され、真贋をめぐりテレビのニュースにもなったことがある。
- この件については、故八木福次郎が「啄木の短冊をめぐって」と題し詳しく書いている(『古本便利帖』収録)。その記事によれば、啄木の間違いない短冊は、同じ新詩社に属していた間島磐雄(富岡八幡宮宮司)に贈った「つかれたる牛のよだれはたらたらと千万年もつきざる如し」だけだったが、教科書に収録すべく冨山房に預けていた時に、関東大震災に会い焼失してしまったらしい。
- 他に2枚ペン書きの短冊があり、1枚は「正月の四日になりてあの人の年に一度の葉書も来にけり」だったことを短冊収集家の森繁夫が「柳屋」56号や朝日新聞(昭和11年)に書いているが、現物が世に出ることはなった。その2枚の内の1枚だったかもしれない件の「東海の」短冊は真贋の確定されぬままその後の行方は分からない。(樽見博)
(2016-11-18 古書通信<八木書店)