〖 啄木の息 〗

石川啄木の魅力を追い 息づかいに触れてみたい

石川啄木が好きな教師 -金子兜太の恩師

◯遠みち近みち

97歳 金子兜太の童心  編集委員 内田洋一

  • 山里に曼珠沙華(まんじゅしゃげ)が咲く秋の一日、蒸気機関車に揺られて埼玉県の秩父を訪ねた。その名もSL句碑巡り号。郷里の俳人金子兜太さんの誕生日を祝い、車内句会まで催す俳句列車は沿線の人に手を振られ、がたごと走る。
  • 曼珠沙華どれも腹出し秩父の子。昔の兜太句もSLの旅情によって近しく感じられる。
  • 皆野町文化会館で開かれたことしの会では、本紙俳壇選者の黒田杏子さんと対談した。97歳の心境を問われ、小学校の先生への恩をくりかえし称え、答とした。「純粋まっとうで、これにまさる先生は我が人生でほかにいませんな」。石川啄木が好きな若き教師は美幻子という清澄な俳号をもっていたという。
  • 先生の句。嘘泣きや渋る呂律(ろれつ)のはがゆくて。

(2016-10-22 日経新聞夕刊)