〖 啄木の息 〗

石川啄木の魅力を追い 息づかいに触れてみたい

「啄木 賢治の肖像」岩手日報(⑫ 識者に聞く)


[ソテツ]


「啄木 賢治の肖像」

 ⑫ 識者に聞く  前国際啄木学会会長・望月善次さん
  友を引き付ける魅力

石川啄木は、家族や恩師、友人らとどのように関わったのか。女性観とは―。望月善次さんに聞いた。

  • 〈両親が啄木に与えた影響〉「初めての男の子で、両親、特に母親は溺愛した。カツ(母)は、一禎(父)が宝徳寺の住職を罷免された後、夫につかずに啄木について回る。啄木は生活が困窮したが、その苦悩から作品も生まれた」
  • 〈姉妹との関係〉「長姉サタは母親代わりのような存在。次姉トラが働かない一禎を引き取り終生面倒をみたことは、石川家にとって大きい。妹光子とは最も親しくした」。妹光子は啄木の死後、啄木の妻節子と親友の宮崎郁雨が男女関係にあったと主張した。「この事件の真相は今も分からない。研究者間では議論が続いているが、2人がプラトニックな関係だったということは間違いないのではないか」
  • 〈師の指導〉「文学面で最も面倒を見たのは与謝野鉄幹。鉄幹なかりせば啄木はいなかった」
  • 〈友人に恵まれた〉「文学的な才能に加え、社交的、前向きな性格や巧みな話術から、多くの人が啄木と友達になりたがった。金田一京助は、家族がアンチ啄木なのに揺るぐことなく終生支持した。啄木は友人を引き付けてやまない魅力があったのだろう」
  • 〈啄木の女性観〉「明治時代には珍しく、女性を尊重する気持ちを持っていた。自立した女性が好きで『大逆事件』の菅野すがのことも評価している」。『ローマ字日記』には春を買ったことも書いている。「明治はまだ『お妾さん』がいる時代。当時のほかの文学者に比べればかわいいものだ。意外と真面目だったと言える」
  • 〈女性たちが啄木に与えた影響〉「啄木はルックスがよく社交的。モテた。ただ、弱点は失恋経験がなかったこと。例外が節子の家出で、その後の啄木の文学、人生を大きく変えた」

(筆者 啄木編・阿部友衣子=学芸部)
(2016-03-23 岩手日報

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