小社会 -高知新聞-
- 〈ふるさとの山に向ひて/言ふことなし/ふるさとの山はありがたきかな〉(石川啄木)。〈ふるさとは遠きにありて思ふもの/そして悲しくうたふもの〉(室生犀星)。古里に対する愛憎をうたった作家や歌人は数多い。
- 日本人の心のどこかに、「故郷忘(ぼう)じ難し」という思いが潜んでいるのだろうか。その全てが「ふるさと」という言葉に感傷的に反応したわけでもあるまいが、それにしても「ふるさと納税」の急速な広がりには驚く。
- 古里や好きな自治体に寄付の形で納税すれば、税金が軽減される。おまけに自治体からは返礼の特典付きとあって、寄付額は過去最高に。高知県でも奈半利町に昨年、13億円に迫る寄付があった。人口割りでは日本一と聞けば、まずは喜ばしい。
- 高級和牛にマグロ、カニ…。豪華さを競う特典合戦は既に過熱気味。古里が「言ふことなし」になるか「悲しくうたふ」ものになるか、長い目で見ていきたい。
(2016-03-08 高知新聞)
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