[アスパラガス]
夜道 卓上四季 -北海道新聞-
- 夜の山道をしばらく車で運転していると、人家らしい明かりを見つけて、ほっとすることがある。雪降る冬は、不思議とぬくもりさえ感じる。
- 環太平洋連携協定(TPP)の大筋合意で農家は突然、夜道を歩かされるかのようだろう。特に酪農家は牛肉の関税大幅引き下げと乳製品の輸入枠新設で二重の打撃を受ける。
- 力の入るアベノミクスでも一向に生活実感が改善しない。非正規の労働者の割合はついに4割を超えた。明日の生活のため、実直に生きる人たちとはどこかかけ離れている気がする。
- 石川啄木に一首がある。<雨に濡(ぬ)れし夜汽車の窓に/映りたる/山間(やまあい)の町のともしびの色>。函館での職を失い、札幌に向かう時の歌だそうだ。にじむ明かりのもとには人々のささやかな営みがある。生活は大丈夫なのか。深い悩みを抱えていないのか。それらに耳を澄ます政治であってほしい。
(2015-11-17 北海道新聞)
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