〖 啄木の息 〗

石川啄木の魅力を追い 息づかいに触れてみたい

無暗に東京に行きたい・・・石川啄木


[ハス]


《 安心?して貧乏生活できる街のはなし 》

  • 戦前の人ながら、同じ東北出身の詩人・石川啄木が次のような一文を日記に残している。「東京に行きたい。無暗に東京に行きたい。北海道まで来て貧乏してるようなら、東京で貧乏した方がよい。」
  • 啄木が貧乏であったのは、若くして養うべき家族を抱えながら、文学を志すも思うにまかせなかった事、そして何より異常なまでの浪費癖、借金癖のためであった。盛岡から函館へ移り職を転々とするも、貧しさから抜け出すため最終的に東京へ乗り込む事になる。
  • 貧乏の話はさておいても、東北出身ならずとも作家・芸術家を目指す者はまず東京を目指す、という傾向は現代においても根強い。啄木と同じ時代を生きた東北人としても宮澤賢治佐々木喜善金田一京助といった志ある者が東京を目指したのである。
  • ところで、なぜ啄木は、「東京で貧乏した方がマシ」と考えていたのだろうか。「東京でなら、貧乏しても楽しみがいろいろあり、生き延びる道、可能性があるに違いない」という事である。啄木は、あくまでも東京まで死にに行ったのではなく、生きるために目指したのだ。まあ、当然の事だろうけれど。
  • 実際、啄木のみならず、多くの日本人にとって東京はそれぞれの地域の厳しい現実から逃れるためのアジールであり、憧れの地でもあった。

―― 見たことのないものを見に行こう 『ガジェット通信』(執筆者: genn33)

(2015-06-21 東京産業新聞社 ガジェット通信)

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