〖 啄木の息 〗

石川啄木の魅力を追い 息づかいに触れてみたい

「人」の上に「一」を加えて「天」…『鎮魂 石川啄木の生と詩想』


[ウメ]


遊座昭吾 著『鎮魂 石川啄木の生と詩想』
  評者 森 義真 石川啄木記念館副館長
「不思議な因縁とふるさとへの思い」

  • 宝徳寺(盛岡市玉山区渋民)の歴代住職は、14世遊座徳英、15世石川一禎、16世遊座芳荀、そして現在の19世遊座芳匡へと続く。その遊座家と石川家の織り成す系譜を、著者は「不思議な因縁」と言い表している。
  • 著者は短歌、詩、小説、評論、日記、書簡などの各ジャンルに優れた「詩想」を発揮した啄木の作品と生涯の原点は、故郷・渋民と青春時代を過ごした盛岡にあった、と説く。そのふるさとへの「鎮魂」という思いも、本書には込められている。
  • 本書は、講演記録、論考を中心に編まれているが、資料も組み込まれており、内容に厚みを増している。
  • 特に、盛岡第一高等学校白堊ホールにおける「最終講義」としての講演「啄木のまなざし」において、「天」は「人」の上に「一(はじめ)」を加えた「天」だという掴み取りには感服させられる。

(2014-03-02 しんぶん赤旗>読書)