〖 啄木の息 〗

石川啄木の魅力を追い 息づかいに触れてみたい

〈うす紅く雪に流れて/入日影/曠野の汽車の窓を照せり〉石川啄木


[ホトトギス]


天地人 -東奥日報-

  • 歌人石川啄木釧路新聞に勤めるため、小樽から釧路まで列車で北海道を横断する。105年前の1月のことだ。昔の列車の旅は情緒があった。〈うす紅(あか)く雪に流れて/入日影(いりひかげ)/曠野(あらの)の汽車の窓を照(てら)せり〉。
  • 事故の心配もなく、ゆったりとくつろげる旅だったらしい。〈みぞれ降る/石狩の野の汽車に読みし/ツルゲエネフの物語かな〉 〈何事も思ふことなく/日一日(ひいちにち)/汽車のひびきに心まかせぬ〉。
  • 今は啄木のようにのんびりできないのが腹立たしい。「列車が事故を起こしやしまいか」。そんな不安があるからだ。JR北海道では特急列車の出火が相次いだり、運転士が覚せい剤を使用していたり、と事故や不祥事が絶えない。

(2013-09-24 東奥日報天地人