〖 啄木の息 〗

石川啄木の魅力を追い 息づかいに触れてみたい

キーンさん「啄木も短歌は見事ですが、金にだらしない。欠点は天才の一部なのでしょう」 


[富士山]


「霧しぐれ富士をみぬ日ぞ面白き」 キーンさんに聞く

  • 世界遺産に決まった富士山。登るもよし、見るもよし。魅せられた一人に日本文学者のドナルド・キーンさんがいる。富士について、そして日本人の美意識について語ってもらった。
  • 「日本語の教科書に『日光を見ないうちは結構と言うな』という言葉があり、どうしても日光東照宮が見たかったのです。しかし結構なのは最初だけで、ごてごてと飾り立てられた日光は、私にはあまり魅力的ではありませんでした」
  • 「1週間後、横須賀から出る船のデッキから、朝日を浴びたピンク色の富士山を見ました。突然、目の前に広がった。生涯で一番美しい富士山です」
  • 「日本人の美意識」をテーマにした最新刊の『ドナルド・キーン著作集』第7巻で、芭蕉の句を取り上げた。「霧しぐれ富士をみぬ日ぞ面白き」。霧がかかって富士の頂が見えない日がいい、と俳聖は言うのだ。
  • 「だいたい天才には悪い面があるものです。ワーグナーのオペラはすばらしいが人間性はひどかった。石川啄木も短歌は見事ですが、金にだらしない。欠点は天才の一部なのでしょう」

(聞き手・中村真理子

(2013-07-17 朝日新聞>カルチャー>アート・文芸)