〖 啄木の息 〗

石川啄木の魅力を追い 息づかいに触れてみたい

「啄木 うたの風景 第23回」岩手日報


[キンモクセイ]


第 23 回
第二部 漂泊の旅路(7)
  桜井さんインタビュー
  新天地で才能が開花

○ 新天地を求めて津軽海峡を渡った啄木。漂泊の旅が始まった函館の132日間は、文学と人生にとって大きな節目となった。啄木に関する著作が多い、近代文学研究家の桜井健治さんに函館と啄木について聞いた。

  • 歌集「一握の砂」の冒頭歌は「東海の小島の磯の白砂に/われ泣きぬれて/蟹とたはむる」。この原風景とされる大森浜をはじめ函館と啄木は切っても切れないものがある。

大森浜は当時、砂山があった。僕が小学生の頃もござを持って砂滑りに行った。長さ700〜800m、高さが40〜50mぐらい。…」

  • 函館は、啄木の文学にどんな影響をもたらしたのか。

「文芸雑誌『紅苜蓿』があり、同人と歌会で競い合った。ここで作歌活動が再び燃焼する。…」

  • 生活も変化した。

「7月に節子と京子を呼び、1カ月だけ親子水入らずの生活ができた。…」「もう一つは郁雨の存在。啄木に一番多く援助した。釧路から函館に戻ったとき、東京に行った方がいいと言ってくれた。それがなければ一地方の詩人、歌人で終わった。… 彼なくして今に残る啄木は語れない気がする」

(2012-09-05 岩手日報