2010-07-16 石川啄木 著(P.14〜15)愛犬の耳斬りてみぬ 『一握の砂』東雲堂版 [トウモロコシの雌しべ] 我を愛する歌 (P.14) 愛犬の耳斬りてみぬ あはれこれも 物に倦みたる心にかあらむ 鏡とり 能ふかぎりのさまざまの顔をしてみぬ 泣き飽きし時 <ルビ>倦み=うみ。能ふ=あたふ。 (P.15) なみだなみだ 不思議なるかな それをもて洗へば心戯けたくなれり 呆れたる母の言葉に 気がつけば 茶碗を箸もて敲きてありき <ルビ>戯け=おどけ。呆れ=あきれ。敲き=たたき。