【高知駅前「啄木の父 石川一禎終焉の地の歌碑 拓本」】
拓本作者・撮影者 岡林一彦氏
支局長からの手紙:啄木の「怒」 /高知
- 石川啄木はその達筆ぶりでも知られています。書家の榊莫山さんは自著「書のこころ」で最澄や空海らと並んで取り上げています。「流れる筆のうごきはリズミカルで、モダン。はなはだ魅惑に富む」(NHK出版)。その一端はJR高知駅前に建立された啄木と父一禎の歌碑で確かめられます。
よく怒る人にてありしわが父の
日ごろ怒らず
怒れと思ふ
- 歌人らで作る「歌碑を建てる会」は歌を刻む際に2人の直筆にこだわりました。しかし、一禎の歌とは違って、「一握の砂」に収められた啄木の歌は直筆が残っていませんでした。
- そこで集字という手法が取られました。啄木が書簡などに残した文字を一字ずつ拾うのです。「建てる会」は石川啄木記念館の山本玲子学芸員に作業を依頼しました。山本さんは、啄木が姉トラの夫、山本千三郎にあてた手紙から集めることにしました。
- しかし、どうしても見つからない字がありました。「怒」。
- 山本さんは「啄木は『怒』という感情を抱かない人。『怒』を『悲』に変えてしまう人だったのではないか」と推論しました。
【高知支局長・大澤重人】
(2009-12-01 毎日新聞>地域ニュース>高知)