〖 啄木の息 〗

石川啄木の魅力を追い 息づかいに触れてみたい

「啄木の短歌、賢治の短歌 第131回」


サンシュユ


「啄木の短歌、賢治の短歌」盛岡タイムス連載中
  盛岡大学長 望月善次
第131回 旅の涙

  • 啄木の短歌

  こほりたるインクの罎を
  火に翳し
  涙ながれぬともしびの下

  • 賢治の短歌

  熊谷の蓮生坊がたてし碑の旅はるばる
  と泪あふれぬ。  

    • 啄木歌は、釧路新聞着任当初のもの。せっけん箱が指につき、熱湯もすぐに冷える「寒い事話にならぬ」状況は、家族と離れた赴任の寂しさも加わり、涙は字義通り「とめどなく」流れたであろう。
    • 賢治作品は、大正五年九月の秩父地方土性地質調査に対応する。熊谷直実が創建した蓮生山熊谷寺には、一の谷の戦いで、彼が斬った平敦盛の追善碑がある。

(2009-02-24 盛岡タイムス)