【ウメ】
「啄木の短歌、賢治の短歌」盛岡タイムス連載中
盛岡大学長 望月善次
第120回 呼吸作用からの展開
- 啄木の短歌
呼吸すれば、
胸の中にて鳴る音あり。
凩よりもさびしきその音!
- 賢治の短歌
息吸へば
白きここちし
くもりぞら
よぼよぼ這へるなまこ雲あり。
-
- 啄木歌は、良く知られた『悲しき玩具』冒頭の一首。『悲しき玩具』の出版を託された土岐哀果が、発見した紙片から冒頭に据えた作品。歌集名『悲しき玩具』も、哀果によるものであったが、抽出歌の著名度も、歌集冒頭に置かれたことと無縁ではない。
- 賢治作品では、「よぼよぼ這へるなまこ雲」と、雲を擬人化し、しかも「よぼよぼ」と断じたところもまた賢治らしい。
(2009-01-27 盛岡タイムス)