〖 啄木の息 〗

石川啄木の魅力を追い 息づかいに触れてみたい

「啄木の短歌、賢治の短歌 第114回」


【啄木歌碑 上野駅構内】


「啄木の短歌、賢治の短歌」盛岡タイムス連載中
  盛岡大学長 望月善次
第114回 人工的作物としての標準語

  • 啄木の短歌

  ふるさとの訛なつかし
  停車場の人ごみの中に
  そを聴きにゆく

    • 故郷への思いを「訛」に象徴させ、しかも在京の話者を暗示させるように「停車場の人ごみ」を配置するところなどココロニクイ。「訛(なまり)」は「言+化(本物でない)」の解字が示すように「正しくない言葉」。しかし、言うまでもなく、言語自身には、本来「正しい、正しくない」は存在していない。
    • この訛について、賢治の方は短歌作品には残していない。

(2009-01-13 盛岡タイムス)