書物漂流 「特集・自分を生きた女たち〜林芙美子」 松島 駿二郎
- 『放浪記』がベストセラーになったことで芙美子の懐は潤沢になった。
- 「私は馬鹿のようになってしまって、イの一番に銀座の「山野」でハンガリアン・ラプソディのディスクを買った。」
- 中国に行く、満州に行く、シベリアに行く。パリに行く。
- シベリア経由の鉄道長旅ですっかりくたびれた。パリ到着後は、1週間ほど立ち上がれなかった。そして、ホテルで横になりながら、啄木がでてくる。
「いくたびか死なむとしては死なざりし、わが来しかたのをかしく悲し」
- この啄木の歌は、たぶん芙美子の心境にぴたりと寄り添うようなものだったに違いない。
(日経ビジネスOnline2006-12-22)