〖 啄木の息 〗

石川啄木の魅力を追い 息づかいに触れてみたい

「凍」凍傷で指の大半を喪失したが 得たものは…

「凍」

  • 沢木 耕太郎・著  新潮社
  • 1,680円 2005年


2002年秋、ヒマラヤの「ギャチュンカン北壁」7,952mに挑んだ山野井泰史・妙子夫妻を描くノンフィクション。雪崩、高山病による体調不良、視力障害、重度の凍傷・・・。一時は「遭難」の知らせが日本に届いた----。

いくつもの闘いが描かれる。たとえば「ビバーク」。
高度7,000m、70度以上の斜度、垂直の壁は1,000mも続く。ピッケルで長時間かけて氷を削りわずかに奥行きが最大で50cmの棚を作る。それが二人のテント場。
次の次の夜は岩場のため7,8cmしか削れない。6本のハーケンを支点とするロープに体を結び、ぶら下がった状態でのビバーク。そこを襲う雪崩・雪崩・雪崩。

(比較したってなんにもならないが、50cmより広い幅で眠れる幸せ)

著者の「後記」に『「凍」は「闘」とつながる』とある。「凍傷」を描いているところでは、自分の指先がローソクのように白く凍っていくような錯覚も感じた。
そして、とてつもなく信頼し合った幸せなご夫婦の温かさも伝わってきた。