〖 啄木の息 〗

石川啄木の魅力を追い 息づかいに触れてみたい

まっとうな人「佐賀のがばいばあちゃん」

佐賀のがばいばあちゃん

新幹線の中で、母と別れたため泣きじゃくる男の子がいた。それを見ている会社員が、自分の過去と少年の姿を重ね合わせていく。このトップシーンが、印象的だ。
会社員は幼いころ、事情があって母と離れ佐賀に住む祖母のところに預けられた。祖母の家に着いたその夜、「よう見ときんしゃい」と火吹き竹を使ったご飯炊きを教わる。

教えてもらったことはそれだけじゃない。

「悲しい話は夜するな。つらい話も昼にすれば何ということもない」
「葬式は悲しむな。・・・丁度よかった、しおどきだった」
「貧乏には二通りある。明るい貧乏と暗い貧乏。うちは明るい貧乏だからよか。それも最近貧乏になったのと違うから、心配せんでもよか。うちは先祖代々、貧乏だから」

母親役の工藤夕貴さんが「台本を読んで大泣きした。日本人って本当に素敵だなぁと感じた」と書いていた。

「まっとうな人間」がどんな人であるかよく分からない。しかし、極めてまっとうな人たちに心を暖められた気分がする。