2009-02-24 「啄木の短歌、賢治の短歌 第131回」 啄木 広場 【サンシュユ】 「啄木の短歌、賢治の短歌」盛岡タイムス連載中 盛岡大学長 望月善次 第131回 旅の涙 啄木の短歌 こほりたるインクの罎を 火に翳し 涙ながれぬともしびの下 賢治の短歌 熊谷の蓮生坊がたてし碑の旅はるばる と泪あふれぬ。 啄木歌は、釧路新聞着任当初のもの。せっけん箱が指につき、熱湯もすぐに冷える「寒い事話にならぬ」状況は、家族と離れた赴任の寂しさも加わり、涙は字義通り「とめどなく」流れたであろう。 賢治作品は、大正五年九月の秩父地方土性地質調査に対応する。熊谷直実が創建した蓮生山熊谷寺には、一の谷の戦いで、彼が斬った平敦盛の追善碑がある。 (2009-02-24 盛岡タイムス)