『歌人啄木』 吉田孤羊著 洋々社 昭和48年(1973年)
目次は、「啄木研究の足跡 ─序に代えて─ 」から始まり「あとがき」まで13章となっています。
この中の「啄木と花」の章より、短歌を取り上げた部分を紹介します。
─ 啄木と花の歌 ─ より
【第10回】⚪︎くらしの中の花 1

・啄木がその少年期に好きだった百合とかぎらず、花ならば、どんな花にでも愛情を注いでいたことは、以上の作品例に依ってほぼ想像できるところであるが、私が深く胸を打たれるのは、彼がその生活に深く花を取り入れていることである。
友がみなわれよりえらく見ゆる日よ
花を買ひ来て
妻としたしむ
・この一首などは、生活を愛しぬいたこの詩人の面影を、一番よく描きつくしているものであろうと思う。
・自分にはかけがえのないこの妻があるのだ。この妻との愛情さえ持続することができれば、、他の一切は無に等しいのではないか。
・男としてやりきれない劣等感に、身の焼ける思い。
・せめてひとの心を和げてくれる花でも求めて、いとしい妻と、まずしくともまどかな家庭の夢を結ぼうという哀感が、歌全体から滲み出ている。
(つづく)