〖 啄木の息 〗

石川啄木の魅力を追い 息づかいに触れてみたい

110年あまり前、啄木は、日本の希望のなさをいっている

ユズリハ

なぜ日本はカルトに弱いか 姜尚中さん「宗教的にも政治的にも無色」

 聞き手・岡田匠

 旧統一教会(世界平和統一家庭連合)問題で宗教と政治の関係が問われている。ひとはそもそもなぜ信仰を持ち、宗教が果たす役割とは何だろう。政治学者の姜尚中さんは若いころの出会いをきっかけに、洗礼を受けてクリスチャンとなった。信仰によって生き方や価値観はどのように変わったのかを聞いた。

  • 1980年代、キリスト教の洗礼を受けました。埼玉県上尾市に住み、大学の非常勤講師をしていたときです。父と、第2の父と呼べる人を立て続けに亡くしました。
  • そのころ、外国人登録法で義務づけられていた指紋押捺(おうなつ)を拒否しました。指紋を押さないと収監されます。市民団体が支援してくれ、その中に土門一雄という牧師がいました。「すべてのわざには時がある」と言ってくれ、救われました。旧約聖書、伝道の書にある言葉です。今、時は姜さんにほほ笑んでいないが、その時が必ずくる、と。
  • 110年あまり前、大逆事件が起きたころ、日露戦争後の国運が高まった時代に石川啄木は、日本の希望のなさをいっている。今、僕も感じるんです。世界3位の経済大国だけれども、希望がない。メディアからも日常会話からも、希望という言葉を聞かず、死語になるのではないかと思うほどです。
  • 希望がない世の中は、不遇な人が増えます。だれもが滑り台から落ちるように不遇な状況になり得ます。だから、不安になる。多くの人は可もなく不可もなく、まあまあ、生きています。
  • でも、自分の力では解決できない問題が起きる。愛する人に先だたれ、どんな人にも死が待っています。それを受け止め、それでも生きていくことに意味がある。そのときに支えになるのが宗教です。(聞き手・岡田匠)

かん・さんじゅん 1950年、熊本市生まれ。専攻は政治学・政治思想史。鎮西学院大学長。東大名誉教授。

(2023-01-04 朝日新聞デジタル

 

なぜ日本はカルトに弱いか 姜尚中さん「宗教的にも政治的にも無色」:朝日新聞デジタル