〖 啄木の息 〗

石川啄木の魅力を追い 息づかいに触れてみたい

牧水と啄木、白秋が近代短歌の始まりと言える

マテバシイ

《あくがれの歌人 牧水みなかみ紀行100年》

(下)功績 短歌「青春文学」に 調和や融和、現代的価値

旅と歌を通して、本県の自然や人にも魅せられた歌人若山牧水。近代短歌を広めた牧水の功績や、次代に継承する意義は―。牧水研究の第一人者で歌人、伊藤一彦さんに聞いた。

 ―同郷でもある牧水の魅力は。

 一般的には生まれた場所が古里だが、牧水は旅に明け暮れていた。牧水にとって古里とは何か、というのが研究において最初の問いだった。結論を言えば、牧水はどこでも古里にすることができた。それぞれの土地で良い自然、人、食に接することができれば、そこは「古里」だったのだ。

 ―牧水は近代短歌の礎を築いた。

 それまでの短歌は古典文学の知識が必要だったが、牧水と石川啄木北原白秋が近代短歌の始まりと言える。3人は同世代で親交が深かった。特に、啄木は死を見取るほどの関係だった。啄木は「いつも目が澄んでいた」と、牧水の明るさに引かれていたようだ。

 ―明治20、30年代に印刷文化が発展し、投稿雑誌が盛んだった。

 今で言うと、ブログやツイッターに書き込んだものを読む感覚かな。ケータイ小説のようなものだ。牧水や啄木の歌は10代の若者でも理解でき、熱心に読んでいた。今では高齢者が親しむイメージもあるが、当時は「青春の文学」だった。その意味で、牧水の果たした役割は大きい。


 いとう・かずひこ 1943年、宮崎県生まれ。現在は若山牧水記念文学館長、宮崎県立図書館名誉館長を務める。
(2022-12-02 上毛新聞)

 

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