軍医vs文豪──森鷗外の二面性 大逆事件下「心の内」を精神科医が読む
小出将則 ,OFFICIAL COLUMNIST
ことしは森鷗外の没後100年。偉大な文豪にして軍医の「二生」を生きたひとへの、元新聞記者の精神科医による探究シリーズ第3回は、明治末期に起きた大逆事件を下敷きに小説化した鷗外の、エリート官僚としての「公の顔」と作家としての「私の顔」の葛藤について。
順調な出世街道 されど真相は複雑怪奇
◯文学者に大きな影響を与えた大逆事件
1890(明治23)年、大日本帝国憲法が施行され、その後刑法では、天皇皇后らに危害を加えようとする者への大逆罪が適用された(戦後撤廃)。同法で訴追された4件を大逆事件と呼ぶが、その中で最初に社会主義者幸徳秋水らが処刑された「幸徳事件」を一般に「大逆事件」としている。
大逆事件は文学者たちにも大きな影響を与えた。
石川啄木はロシアの無政府主義者クロポトキンの著作や公判記録を入手研究し、永井荷風は「自ら文学者たる事について甚だしき羞恥を感じた」(『花火』)と書き残している。
鷗外と大逆事件を語るとき欠かせないのが、医務官僚・森林太郎としての立場と、文学者・森鷗外としての立場の相克関係であり、その際のキーパーソンが元老山県有朋と事件の弁護人平出修だろう。
◯山県有朋と鷗外を結ぶ接点、オモテとウラ
常盤会、観潮楼歌会、永錫会
◯軍医だが、驚くべき行動に
◯大逆事件さなかに発表 2つの小説を深読み
◯鴎外が日記に書き残していない、3つのこと
(2022-11-13 Forbes JAPAN)
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