〖 啄木の息 〗

石川啄木の魅力を追い 息づかいに触れてみたい

〈さいはての駅に下り立ち 雪あかり……〉釧路駅に降り立った啄木の歌

ノウゼンカズラ

朝日新聞

天声人語)鉄路150年

  • 黒船の米提督ペリーの贈品でひときわ日本人の好奇心を刺激したものがある。蒸気機関車の模型だ。
  • 戦後も鉄道は発展の象徴で、田中角栄元首相は「地方の経済発展のためやむを得なければ、鉄道は赤字を出してもよい」と言い切った。
  • だが、いま列島のローカル線から上がる悲鳴は深刻だ。
    〈さいはての駅に下り立ち 雪あかり さびしき町にあゆみ入りにき〉。明治末、釧路駅に降り立った石川啄木の歌である。鉄道網の発達で日本人の行動圏は北へ南へと広がった。時代は移っても、夜汽車や終着駅が呼び起こす情緒は変わらない。
  • 150年間、鉄道は経済的価値で測れない大切なものも運んできた。時代とともに変わるべきもの、時代が変わっても残すべきもの。その双方を思う。

(2022-07-29 朝日新聞天声人語

 

(天声人語)鉄路150年:朝日新聞デジタル