(天声人語)鉄路150年
- 黒船の米提督ペリーの贈品でひときわ日本人の好奇心を刺激したものがある。蒸気機関車の模型だ。
- 戦後も鉄道は発展の象徴で、田中角栄元首相は「地方の経済発展のためやむを得なければ、鉄道は赤字を出してもよい」と言い切った。
- だが、いま列島のローカル線から上がる悲鳴は深刻だ。
〈さいはての駅に下り立ち 雪あかり さびしき町にあゆみ入りにき〉。明治末、釧路駅に降り立った石川啄木の歌である。鉄道網の発達で日本人の行動圏は北へ南へと広がった。時代は移っても、夜汽車や終着駅が呼び起こす情緒は変わらない。 - 150年間、鉄道は経済的価値で測れない大切なものも運んできた。時代とともに変わるべきもの、時代が変わっても残すべきもの。その双方を思う。