《 いまだから 》
♬ mapで楽しむ「啄木の足跡めぐり」<19>北海道釧路市 42
42 南大通7丁目 三味線の絃のきれしを 火事のごと
三味線の絃のきれしを
火事のごと騒ぐ子ありき
大雪の夜に
「三味線の絃」の切れたこと、「火事のごと」、「騒ぐ子」、「大雪の夜」のそれぞれの歌語が複合して不気味なイメージを合成していることである。形容として用いられた「火事のごと」が「大雪の夜」の雪明りの中に噴き上げる焔を幻視させる効をあげていて、「騒ぐ子」(芸妓か)の内面の光景をもいろいろに想像させるのである。
(「石川啄木歌集全歌鑑賞」上田博)
市子は、釧路の芸妓小奴と並ぶ花柳界の人気者で、1908年(明治41)当時17歳。市子の無邪気な言葉やふるまいは、時に啄木の微笑を誘ったであろう。市子とふれあうひとときは、心なごむものであったに違いない。
啄木の市子への眼差しは、歌中「騒ぐ子」の「子」の語に表れているように思われる。釧路で親交のあった女性たちが、みな「女」と歌われるのに対し、市子のみが「子」となっているのは、偶然ではあるまい。
(「忘れな草 啄木の女性たち」山下多恵子)
ビュー中央の歩道にある小さい白い石柱が啄木歌碑。