【解説】不来方のお城の草に寝ころびて 空に吸はれし 十五の心 石川啄木 意味・表現技法・文法
石川啄木「不来方(こずかた)のお城の草に寝ころびて 空に吸はれし 十五の心」の意味や表現技法、文法を解説。この歌からの影響があると指摘される尾崎豊の曲「卒業」「十五の夜」を通して、尾崎と啄木の共通点についても考える。
3行の分かち書きで表記されている。
不来方のお城の草に寝ころびて
空に吸はれし
十五の心
石川啄木『一握の砂』「煙」
・歌の意味
・表現技法・句切れ
・文法
・鑑賞
・中学時代の啄木
・尾崎豊「卒業」「15の夜」への影響
啄木が学校を中退したおよそ100年後の1983年、シンガーソングライターの尾崎豊がデビューアルバム『十七歳の地図』を発売する。
尾崎の曲「卒業」や「15の夜」には啄木からの影響があると指摘されている。
「卒業」は、「校舎の影 芝生の上 すいこまれる空」と歌い出される。さらに「行儀よくまじめなんて 出来やしなかった/夜の校舎 窓ガラス壊してまわった」というフレーズが出てくる。
啄木の場合、後から中学時代に学校に馴染めなかった自分を思い出して感傷に浸っている趣があるのに対して、尾崎の場合、学校や大人に対する現在進行形のいらだちを表現している。そうした違いはあるものの、確かに啄木の「空に吸はれし」の歌と言葉の使い方は似ている。
尾崎と啄木の共通点もこうした見方の根拠となっている。尾崎は青山学院高等部に通っていたが、喫煙や飲酒を理由に停学処分を受け、後に自主的に退学した。尾崎と啄木とでは理由が異なるもののともに学校生活に馴染めず退学したという点は共通する。さらに両者がともに26歳で夭折したところも一致する。
・尾崎豊と短歌
尾崎は幼い頃から父親の影響で短歌に親しんでいたことが知られている。村上龍との対談で短歌を披露している。
ウチのオヤジは空手と尺八の先生なんですよ。で、短歌もやってたんで、僕も詩を書いたり短歌を書いてみたりしてて。僕がいちばん最初に書いた短歌っていうのが、山登りに行った時に創ったもので「父のあと 追いつつ下る 山道の 木の葉漏る陽の かすかに射せり」っていうものなんです。
村上龍との対談「獰猛な異物」『文藝別冊 尾崎豊』
啄木も尾崎も学校や大人へのいらだちを表現し、人の心を打つだけの才能を持っていた。それだけは確かだ。
(2022-06-14 あしかレビュー > 短歌)
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