「喜之床」明治村へ移築のこと
『石川啄木 愛とロマンと革命と』(著者 清水卯之助)より
Ⅲ 啄木の<東京>
四 「喜之床」の二階
- 啄木は明治42年(1909)6月から44年8月まで、「喜之床」という理髪店(現、バーバー・アライ)の二階に間借り生活をした。
五 「喜之床」明治村へ
- 関東大震災や戦災にも焼失せず、啄木旧居として東京では唯一つ生き残っていた本郷の床屋「喜之床」が、いよいよ、明治村入りすることになった。
- 東京都の道路拡幅工事で、アライ理髪店の一角が取り払いになるのを機に、この際全部こわして残りの地所に四階建ての小じんまりしたビルを建て、そこで明治以来の家業を続けようとする「喜之床」四代目の当主新井光雄氏と、愛知県犬山の博物館明治村とのあいだで、譲渡契約がむすばれ去る4月13日正式調印にこぎつけた。明治時代の由緒ある文化財の保存につとめる明治村へ、この啄木旧居を加えようという計画である。啄木忌だったというのも奇縁である。
- 犬山での復元は未定であるが、遠からぬ日に、明治村名所たる鴎外、漱石、露伴などの文人旧居に、啄木の「喜之床」が仲間入りすることになるであろう。
(「岩手日報」昭和53年4月26日)
『石川啄木 愛とロマンと革命と』
・著者 清水卯之助
・発行 和泉書院 1990年