有明抄
癒やしの方言
- 〈ふるさとの訛なまりなつかし停車場の人ごみの中にそを聴きにゆく〉。石川啄木の代表作の一つだが、この歌を読むと、30年ほど前の奇遇を思い出す。
- 師走の京都市で開かれる全国高校駅伝大会の取材で、大阪から京都へ向かう阪急電車の中だった。大きなレンズを抱えたカメラマンと話をしていると、若い女性が近づいてきて「もしかして佐賀新聞の人ですか」と声を掛けてきた。
- 女性は佐賀出身で、京都の大学に進学していた学生だった。聞こえてきた佐賀弁や会話の内容から気づき、懐かしくて声を掛けたという。こちらもうれしかったのを覚えているが、ふるさとを離れて暮らす学生は啄木と同じような思いだったのだろう。(知)
(2022-03-28 佐賀新聞)