風土計
- 「ふるさとの訛なつかし/停車場の人ごみの中に/そを聴きにゆく」。歌に詠んだ石川啄木が5歳の時、古里の渋民を通る鉄道が青森まで開通した。
- 啄木が鉄道で訪れたのは、北海道・釧路から横浜まで。最初の上京は13歳。上野駅助役になった義兄を夏休みに訪ねた。子ども料金だったという。
- 歌集には鉄道を詠んだ短歌が40首ある。「何となく汽車に乗りたく思ひしのみ/汽車を下りしに/ゆくところなし」。旅に託した行き場のない気持が伝わる。
- 鉄道の旅を気軽に楽しめなくなって久しい。「朝まだき/やつと間に合ひし初秋の旅出の汽車の/堅き麵麭(パン)かな」。心躍る旅立ちの朝。せめてもと歌の中で気分を味わってみる。
(2021-10-10 岩手日報)